『ミハル』

TEAM-NACS 第9回公演 ミハル 2003 0204〜0215




 会場に入るとステージ上には、ホテルの一室がリアルに再現されておりました。
ベッド。ソファとテーブル。鏡。机と椅子。そして何故か、三脚に乗った望遠鏡…。そんなものが暖色系のライトの中に浮かび上がりとても綺麗です。

 開演直前に
『あー、あー…』と言うわざとらしい声で、脚本・演出家の先生が場内アナウンスにて諸処の注意をなされました。その内容は『携帯電話のスイッチを切って下さい』『携帯のアラームも解除して下さい』『私語を慎んで下さい』『場内での飲食をご遠慮下さい』これらを丁寧に、念入りにご注意なされておりました。
彼の並々ならぬ芝居への意気込みと緊張がうかがえるかのようです。
笑ってしまったのは、彼のこの一言。
『笑い声は構いません。大いに笑って下さい。でもこれはダメです……あっはっは〜…マジウケル。……これはイケマセン。止めて下さい。』に、場内は大爆笑でした。

 次に、森崎氏のアナウンス。モリプロ旗揚げのお知らせと、チラシのミス
(AMとPMの間違い)の告知、そしてイナダ組の芝居の告知をされました。
いよいよ、場内が暗転。まさに漆黒の闇の中、音楽とともにステージにライトが灯ると、真ん中では二人の男が。。。
ホテルの一室内で今まさに頭を撃ち抜こうとしてピストルを突きつけている男と、後頭部にピストルを突きつけられ、崩れ伏している男。そんな緊迫の中チャイムが鳴り、ルームサービスを聞きに来たベルボーイが何も知らずに明るく入ってきて、死ぬほど驚くところから芝居が始まります。

 撃たれそうだった男が大泉洋。撃とうとしていた男が音尾琢真。そしてベルボーイが佐藤重幸。
パニックに陥ったベルボーイが慌てて110番すると、何故かその電話は部屋にいる男に繋がってしまいます。そして二人は警察官、安藤警部補(音尾)と岡田巡査長(大泉)だと名乗り、更にベルボーイを困惑させます。撃たれそうになっていた事実が納得できない彼に対し、安藤は岡田が超能力で他人の過去を覗くことが出来る、だがその力は痛みを感じないと発動しないのだと喋ってしまい、ベルボーイの過去をのぞき見することに。
そこで彼の名前や過去を見通した岡田。名前や出身地の詐称はおろか、過去の隠したい事実、彼が密かに好きだった子の縦笛を、今も身につけていることまで解ってしまいます。
事実を納得したベルボーイ小宮の目の前で、双眼鏡と望遠鏡を使って向かいのホテルの一室を見張っている安藤・岡田の行動に、彼は興味津々ですが、ルームサービスをさっさと持ってこない為に岡田と子供のような口喧嘩を繰り広げます。
 そんな中、いきなり裸の男がパンツ一丁で扉を開けて入ってきます。カリスマAV男優の『キノコ山本』の登場です。
無類のAV好き・安藤が心酔するキノコ山本は、隠し撮りビデオの撮影がこの部屋で行われるはずだと言い、挙動不審な行動をしながら部屋に居座ります。
 更に突然扉を開けて飛び込んできた、『由美かおるの出来損ない』のような、くのいちの格好の男。誰かから逃げ回っているようなこの男は、このホテルで缶詰になっている田中賞作家・長峰ゲンゴロウと言い、自称ミステリー作家。だが、今はVシネマの脚本を書き上げるため、主人公になりきっていたことを告白。そしてこの男もこの部屋に居座ろうとします。
 闖入者達が居座り続ける中、安藤と岡田は更に見張りを続行しようとしますが、興味津々の小宮・キノコ・長峰が邪魔をするかのように一緒に覗いてくるので、ついに何を見張っているのか喋ってしまう羽目になりました…

 元々は以前起こった日の出銀行強盗事件が発端であることが語られます。行員・客の合わせて40人余りを殺害し、犯人グループ3人も突入した警官隊に打たれて死亡、1億5千万のお金も不明という事件の唯一の生き残り『田中一郎』。彼だけが重傷ではありながら生き残り、退院後も自宅に帰らずホテルに籠もったため、田中一郎に犯罪の匂いを嗅ぎ付けた安藤は、警察の中に共犯者がいると推察し、仕事とは別に越権行為で彼を見張っていたのでした。
しかも、犯人を射殺したのは、安藤であるという事実…。そのため、担当から外されているようです。
 皆、事件に関して様々な憶測を立てる中、小宮はルームサービスを矢継ぎ早に頼まれ退場。警察官二人がカツサンドとコーヒー。キノコが流し素麺(笑) 長峰は手捏ねハンバーグにこだわり、自分で捏ねるからとハンバーグの種を注文する始末。
 小宮がそれらを用意している間に、部屋ではキノコの時折見せる態度や口調の違いに不審を抱く中、長峰が存在を嗅ぎ付けて来たVシネマのスタッフに引き渡されてしまい、退場。
キノコ山本はシリアスな一面を見せつつも、挙動不審ぶりを発揮し、パンツ一丁でヨーガを始め場内を笑いと恐怖の渦に…
 岡田はキノコの過去を読もうとしますが、安藤の余計な言葉でそれが出来なくなります。彼は自分が、重要な過去を持つと感じた相手の過去は全く読めなくなる体質のようです。
 そんな中、全ての要望に答えるべく再登場した小宮の肩には巨大な脚立と水の入ったキャンプ用ポリタンク・バケツ・そして流すための竹の滑り台(笑) 更に、ワゴンに手捏ねハンバーグの種と、何故かカツサンド&コーヒーではなく、アンパンメグミルクを用意して、得意満面な様子。
 キノコの為に用意した流し素麺は、キノコがヨーガのポーズのまま失神してしまったため、キノコの代わりに仕方がなく小宮が食べようとしますが、シリアスな話をする安藤・岡田の後ろで、一人で流して一人で食べようと悪戦苦闘ぶりが実に可笑しい。が、その様子が鬱陶しいと突っ込まれ、困り果てているとようやくキノコが復活。二人が、流しては食べ、流しては食べ…と、鬱陶しさが倍増する中、強制退場させられた長峰が、『邪悪になっちゃったET』の格好で自ら自転車に乗り、再登場!そしてその格好のまま、ハンバーグを捏ね、焼き始めます。次第に場内にはハンバーグが焼けるいい匂いが充満し始め、
視覚・聴覚・嗅覚を刺激すると銘打った脚本・演出家の先生、ほくほくです(笑)

 しかし、事態は安藤がつい口を滑らせて、岡田の能力をキノコや長峰にも喋ってしまうことから急転。面白がった長峰が自分の過去を探ってみろとからかい、岡田は想像もしていなかった長峰の秘密を全て知ってしまいます。
 長峰の唯一のミステリー小説は、ある役者が殺人鬼の役をやろうとするが役になりきれず、人を殺す体感の会得のため、恋人を殺してしまうという内容であり、しかもそれが実体験であると言うことを……。
そして、長峰は語りだします。自分がまだ『アレックス・Jr』と言う名で劇団の看板役者だった時、その頃から彼は形から入らなければ役がつかめず、ノイローゼにまで至ったあげく、それを心配した恋人ともみ合っているうちに間違って殺してしまったのだと。そして、彼女の遺体を神社の境内に埋めてしまった事を
 …が、キノコはそれを否定し、彼は間違ってではなく、その瞬間殺人鬼になりきれたのだろうと彼を責め立てます。長峰は否定しつつも、彼女を忘れないが為に小説としてそれを書いたのだと泣き崩れますが、場がしんみりとした中、突然
縦笛でアンパンマンの歌が…
和ませようとした小宮の仕業に岡田がキれ、小宮を舞台の端っこで座らせたまま、動きを封じてしまう間が絶妙です。
 更に、キノコが昔、殺し屋だった事実が本人の口から語られます。狙った相手を天国に逝かせる40歳童貞ヒットマンから、狙った女優を天国にイかせるAV男優として華麗な転身を遂げた彼は、稼いだ金の全てで全身を整形し、とびきりいい男
でも、古くさい系の顔になって、人生を謳歌している模様…
 
 再び安藤達が田中を見張り始めると、彼は今までテレビを見て笑ったり、一人で鍋をしていたのが突然電話に出てメモを取り、外出していきます。慌てた二人は後を追うべく部屋から退場。更に、キノコの指示により、小宮が向こうの田中の部屋に潜入するため、退場。
素早く田中の部屋に辿り着いた小宮からの電話での報告は、残されたメモには何も書かれてはいないらしい。小宮はどうせ犯罪者の持ち物だからと、部屋に置いてあったリュックをギろうとしますが、突然田中が部屋に戻ってきたためロッカーにリュックを背負ったまま隠れ、事なきを得ます。
 田中を見失って帰ってきた安藤と岡田は、小宮が田中の部屋に潜んでいることを聞かされ大慌て。幸いにも田中は再びメモを取り、出掛けたため、小宮に帰ってくるよう指示しますがキノコが先にメモを見るように指示すると、メモにはラーメンマンの落書きだけがあざ笑うかのように残されているだけ。
残された四人が困惑する中、再度田中が戻ってきてしまったため、ロッカーに隠れる小宮。だがその時、岡田が田中に不審を抱き始めます。こちらの様子が分かって行動しているのではないかと…。
 田中がトイレに入った瞬間を狙って小宮が出てくると、メモには一言、『お疲れさま』の文字が。
そして、田中がトイレから出てきたため、小宮は人質になってしまいます。
慌てる四人の部屋に、田中の部屋から電話が……小宮からの電話がスピーカーで場内に流れ続けることになります。小宮は人質になりながら、状況を伝え始めました。
安藤達の部屋が全て田中の部屋のテレビに映っているという事実を。そしてそれを笑いながら見ていた田中は、キノコのお陰だったと言います。実は、キノコのビデオ撮影はこの部屋で前日に終わっており、撤収し忘れた盗撮カメラが、鏡の裏に仕掛けられていたのでした。そのカメラの様子を受信して、田中は自分の部屋で彼らのドタバタを見ていたようです。
 しかも、田中の口からは安藤が警察内での共犯者であることが語られたらしく、安藤はそれを認めます。
全ては警官隊の指揮を執って突入したとき…田中から金を隠す算段を持ちかけられ、それに乗ってしまったこと。そして、それは犯人を挙げる為だったこと。幼い頃、強盗に家族全員を笑いながら目の前で殺された、安藤の壮絶な過去が犯罪者を憎む余り、彼を警察官に志望させ、今回の行動に繋がったのだということを………。

 小宮に銃を突き付けた田中を、過去のとっくに捕まってしまった自分の家族を殺した犯人と、田中をダブらせて混乱する安藤が窓越しに狙いますが、田中が小宮を狙ってることに変わりはなく、元、殺し屋キノコが銃を握り、狙いを定めます。田中が持っている銃は偽物だと考え、狙いを定め発砲。
なんと、銃弾は
見事に小宮(の背負っていたリュック)に命中! 辛うじて怪我の無かった小宮ですが、非常にパニック状態なようです。
その様子を笑いながら逃げずに見ている田中。そんな田中の過去を読み、銃が本物か偽物かを見極めるため、決死の覚悟で岡田は自分を銃で撃ってくれるようキノコに頼みます。岡田は、死ぬほどの痛みを感じると重要な相手でも過去が読めるのだそうです。
躊躇いつつも銃口を向けたキノコ。そして、発砲と同時に、安藤が岡田の前に身を躍らせ銃で撃たれてしまいます。自分のために後輩を撃たせるわけにはいかないだろう…と。泣き叫ぶ岡田は、その瞬間田中の銃が偽物である事実を悟り、キノコに発砲するよう指示。脚を狙った銃弾は見事田中を捕らえました。岡田は、先輩である安藤を守るため、田中に二度と目の前に現れるなと叫びます。
警官を辞めると言い続ける安藤をも岡田は殴り、二度と警官を辞めるなどと言って欲しくない心情を吐露し続けます…。キノコがやんわりと岡田と安藤を諫め、安藤をベッドに寝かせる中、消え去っていた銀行の金の行方が気になりだす彼らの脳裏に、あるものが思い浮かびました。
そして、それを背負いながらも何も知らずに部屋に戻ってきた小宮がリュックを探り、逆さまに振ると……そこからわらわらと溢れ出すのは、札束の山だったのでした………。

 そして、暗転。
再び照明が当たったステージ上には、立ち並び無言で深々と身体を折り曲げる五人。会場は満場の拍手。
大成功と言っても、過言ではなかったでしょう☆音楽で盛り上げることも、照明で盛り上げることもなく、ただ五人の演技力のみで、笑いと緊張感を生み出し、見事乗り切った舞台はなかなか面白かったです。
彼らの新たな可能性が、この舞台によってまた生み出されたのだなーと、実感いたしました。
 ずっと多大なる不安と緊張を抱えてピリピリしていたであろう、脚本・演出家の佐藤重幸先生……大変にお疲れさまでした。
あの
バケモノ公演『WAR』の後の作品となるだけに、客の期待度も大変に高く、プレッシャーで押しつぶされそうになったこともあるかと思います。まったくタイプの違う作品に、期待はずれと酷評されるかも知れない不安があったかもしれませぬ。
でも、ひとつの可能性としてこの作品のような分野を切り開いた佐藤先生の惜しみない努力を、ワタクシは大変に嬉しく思い、また今後も非常に楽しみなわけであります。
お疲れさまでした………。


 今回の公演、ワタクシは12日と13日の二公演を見たわけですが、見たり聞いたりしたハプニングを少々記述しておきましょう。
まず、12日は全体的に大きなハプニングは無いかと思われました。駄菓子菓子!ガタメを聞いてビックリしつつ、納得した事。
確かにソファの前には黒い物体と、くしゃくしゃになった白っぽい布のようなものが無造作に置かれておりました。かなり後ろの席だったためよくは見えていなかったのですが、まさかアレが、
本番前に脱ぎ捨てた安顕の靴と靴下だったとは!!(笑) 
やけに無造作すぎて、ちと部屋が乱雑な印象を受けたのは、あれのお陰でしょうな〜。先生、お怒りですね(笑)
 
 13日は前から6列目。この日は靴も靴下も置いてありませんでしたが、くのいちモリの簪がぶっ飛んでしまうと言うハプニングが。飛んだ瞬間、台詞が言えず
『あーっ!?』と言って、黙った後、ニヤニヤしながら簪を客に拾ってもらい『かたじけない』かなんか、言ってました。その後、普通に台詞を言う辺り、キャリアが違いますね〜。
 ただ、この件に関しては17日のトークショーでモリ自身が語っておられたのですが、アレは簪を落としたのではなく、付けていたポニーテールを吹っ飛ばしたと勘違いし、
髪の毛がない状態のくのいちはみっともないと思ったのと、自分の演出でならあまりストーリーに関わらないキャラである自分が、そのくらいのアドリブで台詞を後回しにしても良いだろうと言う判断の元、相当悩んでからやっちゃったらしいのですが、後ろで見ていた演出家の先生の視線が冷ややかで痛かった……と。
更に終わった後、ミーティングの席で
『アンタにはがっかりだわ!』と、えらいお叱りを食らったことなど、切々と語られてました。
 
 また8日には、くのいちで駆け込んできて机の下に隠れる手筈のモリが、
思いっきり頭をぶつけてしまったらしいです(笑)<目撃:ヤナー嬢>
 14日は、渡された双眼鏡をモリが
勢い余って壊してしまったとか、失神したキノコである安顕をよいしょっと持ち上げたシゲが、よろけてしまったのか足場が悪かったのかで、違うところに一回降ろしてしまったとかがあったようです。<目撃:文月サマ>

 そしてまた再度、
ご本人達の暴露を少々…
千秋楽では安顕とモリがセットで間違いをやらかして下さったようです。
安藤が岡田の過去を覗く超能力についてキノコと長峰にばらしてしまうシーンでは、安藤の台詞に続いて暫く岡田の台詞が入るのですが、
その辺りを忘れてしまった安顕がかなり台詞を中抜きして、『過去ぉ?』と言ってしまい、更にその台詞を受けて続ける手筈のモリが、さながらパブロフの犬の如く『過去って何だぁ?』と、自分の台詞を言ってしまう大ハプニングがあった模様です。
しかも、続けて安顕、またも正規の台詞を入れ忘れ、『過去?』更にモリの『過去って何だ?』を
連続3回も繰り返したのだとか……。そりゃまた演出家の先生は、プチプチと青スジものでしょう。

と言ったわけで、このようなレポートと相成りました。
最後まで、根気強く呼んで下さった方、大変有り難う御座いました。
 
あと、人物等の漢字は全て適当です(笑)当て字です。だって、耳でしか聞いてないですから… ってことで、ご了承下さいませ。


因みに、記憶違いで、あらすじのエピソードが前後しているやもしれませぬが、温か〜い目で見て、許して下さると幸いです…



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