TEAM-NACS SOLO PROJECT
GHOOOOOST!!

2007年 08/25 〜 08/30
於 : 道新ホール


観劇日:08/25 昼の部 + 08/30 夜の部



脚本 : 佐藤重幸  演出 : 福島三郎


〔出演〕
大河内 浩:山田 春海  二瓶 鮫一:水木 しげお  野中 イサオ:北海 太郎
KITT(ミルゾ・ナヴィアノフ):音尾琢真  手塚 君彦:佐藤 重幸  手塚 文江:加藤 たか子





舞台には白い花々で飾られた三つの棺と遺影。両脇に椅子が幾つか設えてあり、背後の幕にはYamada Scienceと浮き彫りにされたブーメランを持つ謎のインディアンのマークが飾られている。
どうやら社葬の会場のようだ。


厳かな雰囲気で始まった芝居はまるでこれから本当に葬儀が行われるような錯覚を引き起こす。
やがて暗い舞台に一つスポットライトが当たり、真ん中の棺の後ろからのっそりと出てくる人物。
死装束を身につけた中年男性。
お気楽な雰囲気でガタガタと会場の椅子をもって自分の棺の前に移動し、自分の遺影をしげしげと見つめたりしている。
中年男性はヤマダサイエンスの社長・山田春海58歳。
やがて両隣の棺から一人、また一人と出てくる中年男性と初老の男。更にどこからともなく現れた謎の男性は、何故かロシアンチックな死に装束を身につけていた。
最初の二人とも死装束だが、初老の方は何故か着物の裾が昔の子供の着物のような膝丈サイズなのがかなり微妙。
この二人は山田社長に明らかに敵意を持っている様子。
椅子など勧め和やかな雰囲気にしようと務めているが逆効果のようだ。
どうやら三人とも山田が起こした事故に巻き込まれて死んだ被害者らしい。
山田は会社帰りに自分で運転していた車で事故を起こし、後続の車を巻き込む大事故を起こした。
警察発表では山田の体内からアルコールが検出されたことにより、飲酒運転での事故と断定。
で、身よりのなかった無職のこの二人の葬儀を山田と共に社葬という形を取ったものらしい。


二人は山田に謝罪を求めるが山田のいまいち誠意の籠もっていないあっけらかんとた態度に怒りを押さえることが出来ない。


ロシアンチックな男はミルゾ・ナヴイアノフと名乗った。最初は片言の日本語だったが、実は日本語がペラペラのロシア人であるらしい。
いきなり今時の若者系タメ口になったロシア人は時折妙な言動をして何かの病気かと思わせるが、取り敢えず悪いヤツではなさそうである。

話が事故の事になると巻き込まれて死んだのは他の二人と一緒だと言い出し、さらに人間だけが巻き込まれて死んだわけではないと言い出す。
ではこの男性は人間ではないのか? なぜ事故に巻き込まれて死んだのか?
犬、猫、昆虫、色々言うがどうも当てはまらない。
男性は山田と顔見知りのような口振りだ。『おっさんの車に乗ってた。ずっと一緒にいた。』『遊んでやったじゃん!』と言う男に山田がハッとする。
『KITTか!?』
どうやら山田が使っていたカーナビの霊らしい……。
山田がカーナビにKITTと名前を付けてナイトライダーごっこをして遊んでいたようだ。
さて、ここで疑問が湧いてくる。
なぜカーナビが幽霊になって出てきたりするのか? 三人の男性は首を捻るばかりだ。
だがこのカーナビ、ヤマダサイエンスがこっそり開発していた人工知能AIを搭載したものだったらしい。
そして人間と同じ自我を持つに至ったKITTは成仏しきれずにこの場に出てきたのだが如何せんカラダがない。
で、その辺りに居たロシア人の浮遊霊の中に入り込み(本人曰くハッキング)ここに来たというわけだった。
因みにハッキングされたロシア人の意識は抑え込まれているものの、隙あらば出てこようとするの、時折謎の言動を取っていたようだ。

この場に集った霊達ははたして自分達が成仏出来るのか、また自分達の姿や声は生きている人間には判るのか、空は飛べるのか? 等の疑問にぶち当たる。
北海が空を飛ぼうと試みたが、あえなく失敗。
そんなときに山田の息子で副社長の手塚君彦がこの場にやってくる。
慌てて全員で隠れようとするが、やはり君彦には見えていないようだった。
面白がった彼らは椅子を持ち上げてポルターガイスト現象を起こして怖がらせてみたりする。
その時、山田の姿が君彦に見えてしまう。どうやら見せようと思えば簡単に姿を見せられるようだ。
君彦は父と一緒に姿を現した被害者達に土下座して父の所業を詫びる。
そんな君彦の態度に感動し良く出来た息子だと感心するが、山田の態度はどことなくぎこちない。
また君彦も父と呼ばずに社長と呼ぶようなぎこちなさ。
実はこの二人、父と息子ではあるが公彦は山田の妾だった文江の息子で、山田の嫡子ではない。
正妻との間に子供が出来ず、やむを得ず製薬会社に勤めていた君彦を呼び寄せ副社長に据えたと経緯があった。
なので、副社長でもあり次期社長候補ではあるが、正妻や重役達の根強い反感を買っている君彦。
君彦はKITTの存在に驚き、山田を責める。世界で唯一の発明を何故公表せずこのような形で終わらせてしまったのかと。
開発研究部の人間を首にすると言い切る君彦に、社長は自分だと怒りを露わにする山田。
親子の亀裂は思ったよりも根深いようだ。

ナイトライダー好きの山田と北海の間にほのかな友情が生まれつつある頃、ようやく自己紹介でも…という話になる
加害者と被害者達の霊は、酒好きだった山田の棺の前に供えられた酒で宴会を始める。北海と山田は吟醸酒にご機嫌の様子。
また、初めて酒を口にしたKITTは何故こんなものが美味いのか? と、不思議そうだ。
ここでようやく自己紹介が始まった。まずはステージに向かって山田の左隣りの棺の主の中年男性が無職住所不定の北海太郎・42歳。宇宙人だと名乗り、向かって右隣の棺の初老の方がやはり無職住所不定、水木しげお・68歳。妖怪だと名乗る。



葬儀や会社の建て直しの事、更にKITTの研究データの行方等の問題を前に疲れ切った君彦は自分の机で一服ながら子供の頃を思い出していた。
小学生の君彦は12歳で既に酒煙草を嗜む不良息子。
飲んでいた芋焼酎と喫煙の現場をを母・文江に見つかりこっぴどく叱られている。
君彦は学校で椅子を振り回して大暴れしたらしい。
そんな息子を『一体誰に似たんだろうねえ…椅子を振り回す小学生って…』と苦笑いしながら諫める母。
君彦は頭も良く、テストも全て満点という出来の良さ。母の仕事の負担を慮り塾を辞めたいという君彦に文江はそれを拒む。
山田の秘書で愛人だった文江は山田からの援助を受けず、たった一人で昼夜働いて君彦を一人で育てていた。
そんな君彦をクラスメイトは愛人の子と蔑み、陰湿なイジメをしていたようだ。
ビリビリに引き裂かれ、落書きされたノートを文江に見つかった君彦は何でもないと泣き喚きながら必死でそれを抱え込んで母に見せまいとする。
そんな君彦をごめんね…と謝りながら力強く抱き締める文江。

『酒好きなのはお父さんにそっくりだね…』と笑う母に、母を易々と解雇し、その後何の援助もしようとしない無責任な父を憎む君彦。
だが母は会社は自分で辞めたのだから関係ない、父はとても優しい人だと言い、どうか憎まないで欲しいと懇願する。

日曜になったら仕事を休んで一緒にお弁当を持って遊園地に行こうと誘う母。
君彦は母の自慢の奇天烈な料理・タイ風メキシカンライス巻き寿司に文句を言いながらも楽しそうだった。
だが母が急に倒れ、病院に入院する。医者は父親を連れてこいと君彦に言うが『そんな人居ません!僕と母の二人だけです!』と、母の病状をたった一人で受け止める。
文江は随分前から病を患っていたらしく先は長くないようだ。
そんな事を気取られないように明るく振る舞う君彦に、文江は遊園地に連れていけなかったことを謝り、短い生涯を閉じた。
君彦はそこでようやく父・山田と対面をする。
心に深い恨みや憎しみを山ほど抱え込んだまま。



場面戻って葬儀会場。
自称妖怪と宇宙人の言葉に半信半疑のKITTと山田。
北海は昔ぬらりひょんと友人だったとかで、あっさり水木と打ち解けている。
水木は出来たばかりの大阪城に住んでいたと威張り、2名は秀吉の話で盛り上がる。
一方残された二人は嘘吐きと疑ったままだ。

北海が今までの事を語り出した。
彼の故郷はマゼラン星雲の彼方にあるMA-NKO星だという。星の言葉で楽園を意味するこの星は非常に進んだ文化と科学技術を持っていたらしい。
有給休暇を取った北海は旅行代理店の手配で星間旅行へと出掛け、一万年前の氷河期に地球へと降り立ったが旅行代理店の迎えが来ないまま一万年も経ち、今回の事故に巻き込まれて死んでしまったのだという。
眉唾と笑う山田達に証拠を見せろと詰め寄られ、棺の蓋を開かせ遺体の右腕を披露した。それは義手だと言うが精巧に出来た機械仕掛けで、地球のものであるとは考えにくいものだった。
だが宇宙人と言えば大きな目だ!と言う全員に北海は客席に背を向け、目を開いた。
その目に全員驚愕しながら納得する。
そしてやけに辛そうな北海。この星の光は強すぎて目に悪いのであえて薄目にしているそうだ。
ちなみに超能力などはなく、基本的に他の星に住むただの人間というスタンスらしいが、やけに飛ぶことにこだわりが有るようだ。

取り敢えず納得した一同に更に混乱が待ち受けている。
こんどは自称妖怪の水木。400年ほど前にこの世に生み出された現在468歳の座敷童子と言う。
そう言えば名前が…と気付く一同に『水木しげるは人間で唯一リスペクトしています…』とのこと。
見てくれはどう見てもただの禿げたジイサマの水木は一同に座敷童子ではなく座敷爺と言われてしまう。
水木が取り憑いた家には幸せが訪れるが、そこから去ると同じだけの不幸が舞い込む。
なまじ最初に幸せになってからの不幸はダメージが大きいことから、一同に貧乏神扱いされふてくされる座敷爺・水木。

取り敢えず酒を酌み交わす一人の人間と3名の人間以外の霊達。
あっと言う間に酒に飲まれて人間・山田に絡み出す水木。
人間を神サマと呼び、子供のようにぐずる水木は自分は生まれたくなかったのに人間達の想像力でこの世に生み出された存在だと嘆いていた。
やがて正気に返ってから自ら正体を明かしたことを知り、愕然とする。

酒を酌み交わしながら、成仏出来ない理由、即ちこの世への心残りは何だったのかという話になるが、そのまま人間と宇宙人と妖怪とAIの幽霊達は朝まで宴会を続け、朝になる頃北海が………………少しだけ浮いていた。
やけに嬉しそうな北海。
告別式が終わり掛けても全員成仏しそうな気配はない。
北海だけはそのまま天に昇りそうだが、二日酔いで吐いた水木のゲ○を避けようとして反射的にさらに高くまで浮く事が出来た。もの凄く楽しそうだ。

一方告別式では君彦が涙ながらに父の謝罪をし社長が引き起こした惨事による社のイメージを回復させようと、次期社長就任の挨拶に加え、社名変更をその場で発表してしまう。
君彦が発表した社名とは『テヅカ・インダストリー』
ヤマダの名を消す、乗っ取りに近い形だった。
怒った山田は君彦のマイクを奪い取り、会場にいる人間に自分の声で『社長は自分だ。社名変更など断固として認めない!』と反論する。葬儀場は大騒ぎになったようだ。

KITTに促されて降りてきた北海に連れられて水木がトイレに行っている間、KITTと山田の上にヤマダサイエンスのマークが落ちてくるハプニングがある。
変なマークと笑うKITTに、一代目の父がデザインしたものだと言う山田。
落ちてきたブーメランを舞台袖に投げつけ、昔のことを語り出す山田。


ここで山田の回想。
KITTと会話しながら死に装束⇒スーツに着替えをする山田。
場所は文江の部屋。まだ二人とも20代の頃で、文江はホステスをしていた。
甘えながら金をせびる文江に大金を渡す山田と、それを諫めるKITT。
父の会社で副社長をしながらもちちのた代からの重役達と嫁一族の圧力で危うい立場の山田の心のよりどころは、文江だけだったようだ。
いがいにキツイ性格の文江は時折キレると椅子を振り上げて暴れるものの、山田を真剣に心配していた。
文江の自慢のタイ風メキシカンライス巻寿司を頬張る山田と、味見してみるKITT。味はそんなに不味くないらしい…。

事業を拡大しようと懸命に頑張る山田は文江を秘書にした。秘書としての仕事を堅実にこなす文江だったが社内での反感は高まり解雇同然で退社することとなる。



有耶無耶のうちに告別式が終わった葬儀会場に怒り心頭といった君彦が乗り込んできて大声で山田を呼び出す。
君彦は憤慨し、マスコミに面白おかしく書き立てられるであろうことを嘆きながら、山田を挑発するように遺影に落書きをする。
仕方なく姿を現した二人にトイレから戻った残りの二名も加わったところで、君彦はKITTに横柄な態度で取引を持ちかける。

因みにKITTは幽霊になってすぐ、自分の意思で研究施設のデータを全て破壊していた。自分のような不幸な存在がこれ以上生み出されないように…と。
なので唯一残ったのは今幽霊として存在しているKITTのみらしい。

一方KITTは霊体にハッキングする方法を聞かれ、実行してみせる。
手始めに北海に入り込み、その記憶や身体の仕組み等を分析し始めた。北海の身体細胞分裂が無限に繰り返される代謝に限界のない肉体。そしてMA-NKO星ではみな超能力を持っていて、その能力差で地位分けされた世界だったらしいのだが、北海は何の能力も持っていなかったのがコンプレックスであるようだ。
どうりで飛ぶことに拘っていたはずだ。
また水木の肉体は何だかよく解らない仕組みらしい。言ってみれば精神生命体のようなものだという。
次に山田の肉体をハッキングしたKITTは山田の記憶を探り、彼が隠している秘密や心の奥底にしまい込んでいる本当の気持ちを知ってしまう。



さて君彦がもちかけた取引の見返りにKITTは何を望むか?

KITTは仲間が欲しいと言う。
こうやって霊体四人で過ごしてみて、仲間の大事さを実感したようだ。自分と同じ立場の者に悩みや愚痴をこぼせる羨ましさを感じているらしい。
だがそのためにはKITTが破壊したデータを復元が必要となる。
その望みをかなえるためにもKITTの全データが必要だと言いくるめ、持参したノートPCにKITTを取り込むことに成功した君彦はKITTの人格データを切り離さなければデータの復元、ましてや他人格の仲間を作成するのは不可能だと言い、切り離す前にバックアップを取ることを約束する。
約束通りバックアップディスクに人格データのコピーを取った後、人格データを削除し君彦はKITTに馬鹿にされたという理由からバックアップディスクを二つに割ってデータを破壊してしまう。
KITTの人格データがなければいくらデータを復元してもそれは全く別のもの。
山田と過ごした日々により形成されたKITTの人格は戻ってこない。

肝心のデータを手に入れて浮かれる君彦に怒る北海や水木だが、君彦の今までの恭しい態度は一変して非常に横柄な態度を取り続ける。
彼らが人間の被害者だったからこそ誠心誠意謝罪しただけであって、人間でない彼らに謝罪等の配慮は必要ないと言い切った。
山田は実の息子のように可愛がってきたKITTがもう戻ってこないことを嘆き悲しむ。
もう一度KITTが戻ってくるよう強く願った山田に、座敷童子・水木が立ち上がる。
その願い引き受けたとばかりにまずは一旦その場を立ち去る。
途端に北海の上にドリフのコントの如く一斗缶が落ちてき、君彦や山田を襲う巨大ブーメラン。
座敷童子の負のパワーで大混乱の場に颯爽と戻ってきた水木は山田に割れたディスクを確認するように言う。
座敷童子と共に幸福が訪れるため、手にしたバックアップディスクは見事に元に戻っていた。
焦る君彦を水木が椅子の座布団を投げつけるだけのポルターガイスト現象で攻撃をしかけて足止めしたところで、北海がKITTの人格データを戻してKITTを完璧に復活させた。



KITTはバカにされた復讐とばかりに君彦の肉体を乗っ取っり、その記憶や人格を消して人生のやり直しを計る。
どうやら生きた人間をハッキングし、人格を消すなど造作もないことらしい。
君彦に入り込んだKITTは隠された真実の記憶を見、真実を君彦自身から語らせるべく一旦ロシア人の肉体に戻る。
実はこの一連の被害者を巻き込んだ事故は、君彦の仕業だったらしい。
元の勤め先で体にまったく影響の出ない睡眠薬が開発されたのを知り、それを社長室に置いてある酒の全てに混ぜておいた。
後は帰宅前に軽く飲んでから自分で車を運転して帰るのを待つだけだった。
そして見事目論みは達成され、山田は事故死した。
6人も巻き添えにして。
やけくそになった君彦は、こうして山田が目の前に化けて出来てくれて有り難いと言う。自分の想いを死んだ後にこうしてぶつけることが出来る…と。
何故自分達を見捨てたのか、何故母を見捨てて一人にしたのか、母は山田のせいで死んだのだと山田を責め立てる君彦は、自分の体の中に流れる山田の血すら呪わしく思っていたようだ。
だがKITTと山田から、君彦の体に山田の遺伝子も血も、何も受け継がれていないことが語られた。
責任逃れするのかとさらに激昂する君彦に、死んだ母・文江の『本当よ!』という言葉が…。
そして死に装束姿も美しい文江が何処からともなく現れる。懐かしい母の姿に唖然とする君彦と嬉しそうな山田。
此処から過去の回想に入り、文江と山田の会話に。
お腹の中の子供は山田の前の男との子供だと告白する文江。でもどうしても生みたいと言い張る文江に、山田は跡取りが出来たと喜ぶが文江が断固拒否をする。
会社は辞めて自分一人でこの子供を育てたいと言う文江。今になって本当に山田の事が好きになってしまった文江は自分への罰だと、一切の援助の申し出を断り続け、認知のみに留めておいたらしい。
その間も山田はどうにかして養子に…と働きかけるがそれも拒否してしまう文江。


20年ぶりに姿を現した文江は君彦に謝りながら優しく抱き締めるが、自分は人殺しだから自分に触っちゃダメだと泣き叫ぶ君彦。
霊は生きた人間には触れられないはずだが、文江はしっかりと君彦を抱き締めていた。

また山田に何故血の繋がらない自分を副社長にしたのかと問う君彦に、山田はお前の半分は文江で出来ているお前を愛していた。自分を憎むことで自我を保っているような君彦に、おいそれと事実は話せなかったと言う。

全て納得し罰を受け入れて死ぬ覚悟をした君彦は、KITTに自分に入るよう促す。
KITTは君彦を「消す」と宣言し、君彦に乗り移てさっさと「消した」ようだ。
それを見て悲鳴をあげる文江と、KITTを殴り飛ばす山田。
君彦の体を抜け出したKITTは全員に姿を隠すよう指示する。気が付いた君彦は山田の遺影の落書きに首を捻り、携帯で話しながら退場していく。
KITTは君彦の記憶の一部分のみを消しただけだった。
父殺しの部分や忌まわしき真実の記憶を消された君彦は、憎らしい父が事故死したと言う記憶のみが残っているらしい。



さて、一同がホッしたところで「じゃあこれからどうやって成仏すればいいのか?」 と、なる。
取り敢えず20年も前に死んでいる文江に聞くと、今まで神様の元に居たとのこと。
ここで世界の神様が大集合する。
人間の想像によって妖怪が生み出されるのならば、神も生まれているわけだ。
と言うことで一人一人成仏させて貰えることになった。しかも大サービスの前世の記憶付きで。
人間になりたかった水木は、家族が居て普通に歳を取って死んでいける人間になりたいと願う。
星に帰りたかった北海は一万年もこの星にいたので情が湧いてしまったからこの地で人間に生まれ変わってもいいとのこと。
KITTも人間になってみたいらしい。但しハッキングはもう出来ない事を悔やんでいたようだ。
オマケでロシア人も成仏させて貰えるようで喜ぶロシア人。
文江と山田の二人は文江が山田が来るまで生まれ変わらずに待っていたので、二人揃って仲良く生まれ変わり、次に結ばれることを願う。
文江に至っては君彦の娘として生まれてきたい、そして自分の死後やり残した躾したいと言う。
今までの義理の息子が将来義理の父になる複雑さに、苦笑いする山田だった。


こうして皆が笑顔で天国への階段を登り、成仏してハッピーエンド。










いやー、いつにも増して長いあらすじでした。
どうしてこう纏められないのかねぇ。。。毎回反省しつつ同じことを繰り返すアホです。



でもって今回は札幌公演の皮切りと〆を見たわけですが、28日はやはり役者の皆さんが少しばかりかたかったのですが、千秋楽は実にのびのびしてました。
アドリブも多かったし(笑)

今回やはり一番面白かったのは音尾琢真氏の演ずるKITTでしょうか。
というより、ロシア人が面白い。
最初は辛うじてロシア語らしきものを話していたのですが途中からもう何が何だか。

『ぼるしちー』
『ごるばちょふー!』だの『ちぇるのぶいり〜!!』だのと、突然喚き出すのがもう楽しくて楽しくて。
片言の部分はどうも。。。ダバオ(HONOR/フィリピン人)テイストが入ってました(笑)


シゲの演ずる手塚君彦は。。。何て言うか、シゲお得意な感じでした(笑)
悪いヤツなんだけどなんだか憎めない。ま、今回は特にねじくれてしまった課程が詳細に描かれていましたので、KITTを葬り去ろうとするところ以外は大した不快感もなく。
逆にちょっと感情移入して泣けるシーンも多かったですね。
根は悪くない子だからというか、母のために頑張りすぎた結果、父親を憎んで殺しちゃったというか(笑)
動きもいかにもシゲだなあ、って感じ。最上級の土下座をしながら前にてけてけ進んで逃げようとする場面、大好きです(笑)

あと、最後の山田のオッサンの告白シーンで、『お前の半分は文江で出来ている…云々』を受けての君彦の台詞が『バファリンかよ…』には大笑いしました。
いかにも辛そうな情けな〜い顔をして、呟くのが絶品です。


座敷童子・水木の力でほんの少し飛ぶことが出来た北海さんが、舞台でだまーって浮いているのには笑えました。
そして降りてきたところでKITTと抱き合って喜ぶのですが、琢ちゃんが必死で宙づり装置を外しているのが見えて面白かったですよ。
毎回ご苦労さんでした(笑)


文江が椅子を振り回して暴れた君彦を叱るシーンで『男なら拳で語るの!ほら、ラオウよ!!』と説得しながら突如ラオウしてしまうのも好きでした。
どうりで原哲夫から花が届くはずだよ(笑)
初日に見つけて大笑いしましたもん。。。

因みに花は大千秋楽では全て撤去されてました。。。


KITTにハッキングされた方々が琢ちゃんっぽい演技をするのも見所かも。
シゲはまぁ解りますが、水木さん役の二瓶さんあたりはかなり面白かったです。
あと、時折膝が痛そうな演技をしてました。膝に水が溜まってる歳喰った座敷童子最高!(笑)

そうそう、劇中で出てくるタイ風メキシカンライス巻き寿司
君彦は結局食べ損ねて残念がっていますが、山田は文江と付き合いだした頃にしっかり食べています。
味は辛くて酸っぱくて…不味くはないらしいのですが、日々試行錯誤を重ねて色んな味になった模様。
KITTも山田の回想シーンで味見するのですが、初日は不味くないと言っていて千秋楽では不味い!と言い切ってました(笑)
見た目は色々なハーブらしき草が混ぜられたり差してあったり。
しかも何かぬるぬるするモノが混ぜ込んであったらしい。
大河内さんはそれが美味いと言ってましたが、琢ちゃんはしかめっ面してました。





千秋楽はカーテンコールの後、まず演出の福島さんがステージに出てきて、舞台中央のステージに役者の映像が流れた後、一人一人挨拶が有りました。



演出家・福島三郎:札幌は涼しくて快適で食べ物も美味しい的な事を。そしてスープカレー等の美味しいものを食べ過ぎて、折角痩せたのにまた太ってしまった。
小太りの演出家です。NACSのソロプロジェクトに関われて本当に良かった…と。


音尾琢真:皆さん本当に有り難う御座います。でも僕の頭の中は『脳内メーカー』では全部がウソとでたので、この有り難うの言葉も本当は殆どがウソなのかもしれません(笑)


野中イサオ:NACSのふぁんの皆さんは熱気があって熱い。前にNACSの芝居をみたときはこんなオジサンが紛れ込んで周りに圧倒されました。
この熱気を貰って頑張りました。


加藤たか子:…えー…あの……本当に有り難う御座いました……


大河内浩:本当にNACSファンの熱気は凄いね…。どうも有り難う御座いました。


二瓶鮫一:本当に有り難う御座いました。どうも台詞が覚えられなかったり忘れちゃったり…舞台の上で出てこなかったことがありましたよ(笑)


佐藤重幸:皆さん本当に有り難う御座います。ここでこの場には居ないのですが、この芝居を造り上げてくれた全てのスタッフにも拍手を頂けないでしょうか…素晴らしい拍手を有り難う御座います。



と、こんな雰囲気の御挨拶でした。あくまでもも雰囲気ですよ、雰囲気。正確では御座いません。




最後は盛大な拍手やスタンディングオベーションでした。。。シゲは目を潤ませて唇を噛みしめながら会場を見渡してました。

本当にお疲れさまでした〜。


2007/09/03





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