『びっくり箱 −姉妹編−

札幌公演:2006年 3月24(金)〜25(土)
於:道新ホール


◆岸本とし子(岸本家の姉):余貴美子  ◆岸本厚子(岸本家の妹):沢口靖子
◆米倉友行(とし子の男)永島敏行  ◆田島良司(厚子の男):佐藤重幸
◆平岡春子(隣家通夜の客):草村礼子  ◆小塚圭介(隣家の主人):小宮孝泰

◆小塚ルミ子(小塚圭介の妻):
琵琶弓子




場所はNACSには馴染みの深い道新ホール。
シゲ目当ての若いお嬢さん方と、向田邦子がお好きな年輩のご婦人方とにはっきりくっきりと別れた客層でしたが、客席はぎっしりと埋まっておりました。




◇ ◇ ◇




舞台にはリアルに作られた岸本家の一階玄関から居間にかけての部分にトイレと縁側、そして隣家に続く庭が作られており、昭和の懐かしい雰囲気を醸し出しております。
二階部分の窓にはほんのりと明かりが灯り、時折足踏みミシンの音が響いてくるところからお芝居は始まります。


一階では米倉が何やらこそこそと捜し物をしています。
泥棒のような仕草で家捜ししていると、戸棚から突然古そうな箱が落ちてきて慌てたところに、二階でミシンを踏んでいたこの家の主・とし子が下りてきて慌てる米倉。
今夜行われる隣家のおばあさんの通夜に行くためにネクタイを探していたと言いますが、どうやら探していたものはそれではなさそうです。
そんな事には気付かない少々のんびり屋のとし子は、米倉がひっくり返した箱を見て慌てて片付け始めます。
中身はとし子と、妹の厚子に宛てた母からの手紙でした。
早くに夫を失い、女手一つで姉妹を育て続けた母は誕生日や何かしらの行事・節目等に必ず同じ内容を二人に手紙を渡し続けていたと語るとし子。
『男はしっかりと見定めなければならない。決して甲斐性のない男に引っ掛かること無く、堅実な男性をつかまえるように。決して悲しみの種を拾わないように…』と繰り返し綴られた手紙の束を箱に戻しながら、とし子は米倉を相手に語りだします。
東京に出て看護婦をしている出来の良い優等生だった妹の厚子と、母の元で洋裁を手伝っているだけだった自分のこと。
そして数年前にその母が亡くなりようやく自由になったとし子がつかまえたのは、実家の材木屋を見事に潰してしまい現在無職状態の米倉。
家の改装の時にたまたま建築屋に出入りしていた米倉は、今ではしっかり岸本家に住み着いています。
そんな状況を妹にどう話して良いか解らず、悩んでいるとし子でした。

 さて、隣家では母と親交の深かった小塚圭介の母の通夜が行われる事になっております。
とし子は先程から圭介の喪服用スラックスにミシンをかけていたのですが、丁度その時圭介が訪ねてきます。
とし子がチャックを買いに出た中、岸本家で顔を付き合わせる赤の他人の米倉と隣家の喪主がなかなかにシュールです。
山を買わないか?とインチキめいた商売をふっかける米倉と、のらりくらりと逃げる圭介。
結局圭介が戻ってしまうのですが、その頃岸本家のすぐ近くに現れたのは派手なワンピースを着た厚子と、大きな荷物を抱えたスーツ姿の若い男。
厚子は男を家の近くに留まらせたまま、先に姉に会って状況を説明しようと家に入ってきて米倉を見つけ、大騒ぎ。
一方若い男は大きな荷物を抱えていたことから圭介の嫁・ルミ子に通夜の客と間違われ、小塚家へ連れて行かれてしまいます。

 戻ってきたとし子に詰め寄る厚子とタジタジのとし子。
自分の居ない間に思いでの家を改装され、見知らぬ男を連れ込んで同棲していた姉に当たり散らす厚子ですが、突然帰ってきた理由を聞かれて口ごもります。
実は事前に里帰りする旨を描いた手紙を出したはずだったのですが、どうやら届いていない様子。
そんな折り、隣家から圭介に連れられて厚子が連れてきた若い男がやって来ます。
男は厚子の婚約者で年下の田島良司。
一応スーツを着てはいるものの、特撮映画の監督を夢見ながらヒーローショーでバイトをして暮らしているとのこと。
姉妹揃って定食を持たない男を掴まえてしまったのでした。
しかも厚子は妊娠しているのですが、その事は田島にはまだ内緒にしてあったのでした。


 姉妹は隣家の通夜に出掛け、残された初対面同士のヒモ男二人がラーメンを啜りつつ色々な話をしていると、程良く酔っぱらった厚子が戻ってきます。
相性が良くないのか姉の相手が許せないのか、厚子は米倉に冷たい態度を取り続け、この家から出ていく事を強要します。
結局田島と米倉は外に飲みに行き、今夜は通夜が終わった頃に小塚家に潜り込むことにしたようでした。
そんな中、隣家の通夜客がトイレを借りにやって来ます。それは岸本家の母と仲が良かった平岡春子でした。
春子おばさんは厚子と懐かしそうに昔話を始めます。姉妹の母と圭介の母と3人で過ごした懐かしい昔の話を。
そこで厚子は早くに亡くなった自分達の父親のことを聞き出します。今まで母が口を重く閉ざして語られなかった真実。
それは父親もまた甲斐性無しだったという事実。
姉が幼い頃に見たというスーツ姿で役所に勤めに出掛けていた優しい父親は、実は人に騙されては借金を背負い、母の仕立てたスーツ姿で職安に向かう姿だったと知り、呆気にとられる厚子。
母は自分がした苦労を娘達にさせたくないがために、執拗に手紙を書き綴っていたのでした。


翌朝。まだあやしげな商売の打ち合わせを電話でしている米倉と、昨夜小塚家の通夜で喪主の圭介がした挨拶にやたらと感動している田島。そして起きてきた厚子。
とし子は二階で何やらミシンで縫っている様子。
葬儀の終わった隣家から圭介の嫁が来て、都会に憧れる夢を田島に語ったり春子おばさんが来たりしながら、物語は終焉へと向かいます。
厚子が妊娠を告げられて大喜びする田島。
そして二階から降りてきたとし子は大急ぎで縫った赤ちゃん用の産着を二着渡します。
ところが突然皆の前で吐き気を催すとし子。
米倉の話ではここのところ、おかずに酢の物ばかりが出ていたそうで、この日の昼ご飯に用意されていたものもタコとキュウリの酢の物。
腰が抜けそうな程に驚く米倉。そしてとし子に詰め寄る厚子。
実はまだ病院に行っていないものの、とし子も妊娠していたのでした。
産着も自分用と厚子用に縫ったものを、間違えて二着とも渡してしまったとのこと。
ここで米倉が一念発起します。
汚い仕事からきっぱり足を洗って生まれてくる子供の為に真っ当に生きる決意をします。
とし子を病院に連れていくため通りでタクシーを拾う田島と、田島のネクタイを借りてびしっとスーツを着て心を入れ替える米倉。
そんなところに隣家の嫁、ルミ子まで妊娠が発覚するのでした。

最後は『骨まで愛して』を合唱しながら大団円で終わり、元気な厚子が誰も居なくなった居間で夫となる田島の真似をして『変身!』と、元気に明るく飛び跳ねて暗転します。




そんなわけでかなり途中端折ったりすっ飛ばしたりしてます。しかも記憶違いも多々あるかと…。
何せ一階しか見ていないので記憶が曖昧すぎて。。。
ちょっと違う!と思っても、どうか生ぬるく見逃して下さいませ。。。





◇ ◇ ◇



全体的に明るくてほのぼのとした大人のお芝居でした。
何よりも役者さん達がベテラン揃いなので、見ていてもの凄く安心出来る雰囲気で御座いました。

とし子役の余さんがほのぼのとしていて少し間の抜けた雰囲気の姉を伸び伸びと演じていれば、厚子役の沢口嬢は気が強くてきびきびとしているのにどこか憎めない妹役を素敵に演じていらっしゃいました。

個人的に、シゲの田島がハーモニカを吹くシーンで『ヒーローショーのヒーロー役だから頑張って練習したのに、よく考えたらショーの最中はヘルメットを被っているのでハーモニカは吹けなかった』だの、米倉のラーメンの麺を勝手に奪って食べたり、残したスープを啜っていたりと非常におちゃらけたシーンが好きで御座いました。
あと、隣で告別式をやっているのに『骨まで愛して』をみんなで歌って顰蹙を買うシーンも好きですな。
春子おばさんのほのぼのした語りもいい雰囲気でした。
夜中に仏壇から母親が抜け出してきたのには大笑いしましたが。


全然書き足りませんが、まあこんな感じで本当に面白い良いお芝居でした。




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